蜜月なカノジョ(番外編追加)

「杏、もしかして…なんか嫌な目にでも遭わされたのか?」
「えっ?」

食事をしている間もぼーっと心ここにあらずな杏に我慢できずに聞いたはいいが、当の本人は「何が?」と言わんばかりにキョトンとしている。

「何もないですよ? どうしたんですか? 急に」
「いや、だって…なんか様子がおかしいから…何か悩んでるのかと思って」
「…っ、や、やだな、何にもないですから。ナオさんの気のせいですよ~!」

そう言ってサッと視線を逸らされたのは絶対に気のせいなんかじゃない。

絶対におかしい。あからさますぎる。
何だ? 一体何があった?
聞きたくて堪らないのに、杏からは拒絶オーラがぷんぷん出ているせいで踏み込めない。内容によっては彼女を深く傷つけてしまう可能性があるだけに、こちらの気持ちだけで強引に聞き出すこともできない。

せっかくさっき気持ちを入れ替えたばかりだというのに。
いつものように甘い時間を過ごして杏を感じたいと思っていたのに。
またしても正体不明のモヤモヤが心の中に張り巡らされていく。


その後も杏の様子はおかしいままで、しかも明らかに俺を避けているのがわかっているだけに、俺もそれ以上拒絶されることに耐えられなくてぎこちないままに寝る時間となってしまった。
本当なら今夜は少し踏み込んだスキンシップをしたいと思っていたが…こんな様子じゃ到底できそうもない。

もしもキスすら拒否されてしまったら…きっと俺は一生立ち直れない。

「…おやすみ」
「…おやすみなさい…」

せめてこれだけはと布団に入りしな勢いを借りてチュッと杏の額にキスをした。
その時杏がどんな顔をしていたのか、反応が怖くて逃げるように布団を被った。

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