蜜月なカノジョ(番外編追加)
……眠れない。
悩みを吹き飛ばすつもりが新たな悩み種が増えたのだから眠れるわけがない。
こんな時こそ思いっきり杏を抱きしめたいが、意識のない寝ている間ですら拒絶されたらという可能性が頭を掠めてブルッと震えた。
絶対に、絶対にそんな恐ろしいことはあってほしくない。
「はぁ…」
暗闇に直ぐさま溶け込んでいくほどの小さな声で溜め息をつくと、ゴロンと仰向けになって右腕で目を覆った。
暗いはずなのに目がチカチカして眠れない。あぁ、くそっ!
「…………え?」
その時だった。何かごそごそと得体の知れない違和感を覚えたのは。
暗いせいでよく見えないが、自分の体を何かが這っているのを感じる。
脇腹の辺りから胸の方へと確かに動いている。
とはいえ、「何か」と言ってもこの家に動物はいない。
幽霊でもないなら思い当たるのはどう考えても____
「……杏?」
その名を口にすると腹の辺りにあった手がビクッと激しく反応をみせた。
「えっ?!」
どうしたと言葉を続けるよりも先に突然ガバッと布団が吹き飛ばされて、消えた温もりの代わりに柔らかな何かが腹の上に乗っかった。