蜜月なカノジョ(番外編追加)
玄関から聞こえてきた大きな声にビクッと体が竦んだ。
…どうしよう、こんな顔見せるわけにはいかない。
ただでさえ面倒な女だと思われてるのに、一人悲観的になって号泣してたなんて知られたら、ますます嫌われてしまう。
そんなの嫌だ。お願いだから涙よ止まって。
ちゃんと笑顔でお出迎えしなきゃ…!
「…杏? ただいまー」
ゴシゴシと涙を拭って慌てて立ち上がると、なるべく泣き顔だと見抜かれなくて済むようにリビングの扉の陰から顔を出した。
「………お帰りなさい」
こんな出迎え方は初めてで罪悪感でいっぱいだったけど、泣いていたことをつっこまれるよりはマシだ。
また明日からはいつも通りに戻るから。だからどうか今日だけは許して欲しい。
とにかく平常心、平常心。
これ以上ナオさんを幻滅させないようにしなきゃ。
しっかりしろ、自分!
そう言い聞かせて普通にしていたつもりなのに。
「杏、もしかして…なんか嫌な目にでも遭わされたのか?」
「えっ? …何もないですよ? どうしたんですか? 急に」
「いや、だって…なんか様子がおかしいから…何か悩んでるのかと思って」
核心を突かれた一言に、私の心臓は止まりそうなほどに嫌な音をたてた。