蜜月なカノジョ(番外編追加)


「はぁ……」


その時、静寂が包み込む寝室に確かな溜め息が響いた。
それは小さな小さな、耳を澄ましてようやく聞こえる程の小さな音だったけれど、真横にいる私にはばっちりと聞こえてしまった。

……ナオさんが怒っている。

ただでさえ負担を強いているのに、それなのに私は不自然な態度ばかりとってしまって。離れたくないと思いながらも実際はその真逆だと思われてもおかしくない行動ばかりしてしまって。
これで愛想を尽かされない方がおかしいのだ。
あれだけ心の広い菩薩のようなナオさんですら呆れさせてしまう私は___


『もったいつけた焦らし女』
『俺のこと好きじゃないんだろ?って』
『あなたのことが好き!って押し倒せばこっちのもんだって』
『悩殺テクの出番よ~』


昼間聞いた会話が突然マグマのように噴き出して脳内を駆け巡る。
呪文をかけられているように、他のことは何も考えられなくなるくらいにぐるぐるぐるぐる私の思考を埋め尽くしていく。

悩殺テクって何…?
何となくの想像はついても私にはそんな知識も技術もない。
それどころか下手すればますますナオさんに愛想つかされるかもしれない。

でも、このまま何もしなければきっと私は確実に…

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