蜜月なカノジョ(番外編追加)
「まず最初に言っておくけど、俺は杏を避けたりしてないから。どんなことがあっても俺にとってそれだけはあり得ないから」
嵐のようなキスの後、すっかり放心状態になってしまった私に苦笑しながら、ナオさんは変わらず背中でトントンとリズムを刻みながらぽつりぽつりと話し始めた。
「…ごめん。でもそう思わせてしまってもおかしくなかったよな。…正直、どう杏と向き合っていいかわからなかったんだ。…この前偶然聞いてしまったから。…杏に昔付き合った男がいるってことを」
「…え?」
ぱっと顔を上げた私に、ナオさんはものすごくバツが悪そうな顔を向けている。
「ごめん。話が聞こえてきたのはほんとに偶然だったんだけど…足が貼り付いたように動けなくなって。男性恐怖症の杏ならきっと今まで男と付き合ったことはないんだろうって、勝手にそう思い込んでたから。だから思いもしない話を聞いてショックだったっていうか…ほんとごめん」
ナオさんが言っていることが何なのかにようやく思い当たる。
もしかして、あの時の会話を聞かれてたってこと…?