蜜月なカノジョ(番外編追加)

「…高校生の頃、同じ委員会だった子の中に私が唯一まともに会話が成立する男の子がいたんです。まともって言っても普通の人に比べればかなりぎこちないですけど。ガツガツした感じがなくて、物静かで。何て言うか、男の人なんだってことを感じさせない人で…」

親しいというほどではないけれど、気が付けば顔を合わせる度に少しずつ会話が増えていった。当然既に男性恐怖症に陥っていた私にとって、その存在はとても貴重だった。

付き合いが長くなるにつれ、自ずと相手にも自分が男性恐怖症であることが知られてしまう。それを知った彼は「じゃあ俺でリハビリしたらどう?」と言った。
後にも先にも接していて怖くないのは彼だけ。
私はその言葉に甘えて、少しずつ、本当に少しずつその距離を縮めていった。


お互いに何も言わなかったけれど、それぞれが異性の中で最も親しい相手であるのはおそらく疑いようのない事実だったし、最初は委員会だけだった接点も、流れる月日と共に増えていった。

そんなある日、名前を呼ばれて振り向いた瞬間、彼にキスをされていた。
本当に不意打ちの出来事だったけど、不思議とそれを恐怖だとは思わなかった。
ただただ気恥ずかしいばかりで。
そうしてお互い顔を真っ赤にしながら一緒に帰った。

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