蜜月なカノジョ(番外編追加)
「あの日、ナオさんに聞かれていた時言葉に詰まったのは、色んなことが甦ってきてすぐに反応できなかったっていうか…結局あの出来事は何だったのか私にもわからないままなので、それで…」
グッと強く背中を引き寄せられてそれ以上言葉を続けられなくなった。
その代わりに口を開いたのはナオさんの方で。
「もういいよ、杏。…ごめんな。俺の嫉妬で嫌なこと思い出させて」
腕の中でふるふると首を振る。
それは違う。思い出したのはナオさんのせいなんかじゃない。
それを伝えたくて言葉の代わりにギューッと背中に手を回すと、首筋に顔を埋めたナオさんがはぁ~っと悩ましげに大きく息を吐き出した。
「…情けないけど、すげーほっとしてる」
ほっとしてる? 何に?
顔を見ようと思っても拘束する力が強くて体が動かせない。
うぬぬっ…!
「杏が嫌な目に遭わされたことに対しては怒りしかない。…けど、杏が誰のものにもなってないってことに…心の底からほっとしてる自分がいる。…まぁ本音を言えばキスされたっていうのも面白くねーけど…」
「……」
まるで子どもが拗ねてるかのような声に思いっきり体を捩って距離を取ると、やっぱりナオさんは口を尖らせながらいじけていた。