蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…でも俺も嬉しかった」
「何がですか?」
「杏が俺を失うんじゃないかってことを恐れてあんな思いきった行動をとってくれたことが」
「_____」
ふふっと夢心地で笑っていた顔がその一言でピシッと凍り付いた。
…さっきの今ですっかり忘れていた。
そういえば私ってば…何をした?
何を…
「~~~っ、いや~~っ!! さっきのは忘れてください! 記憶から抹消してくださいっ!!!」
「杏っ!」
思い出すのもおぞましい痴態の数々に耐えきれなくなってバフッと布団の中に潜り込んだ。
あぁ、本気で記憶を消す薬が欲しい。
時間を戻す薬が欲しいっ…!
「あーん、いいから顔見せて」
「い、いやですっ…!」
「言っただろ? 俺はめちゃくちゃ嬉しかったって。杏は嫉妬してくれることが嬉しいって言ってたけど、それは俺だって同じだよ。不安になるのも大胆な行動に出るのも、全部は俺を好きだと思ってくれればこそだろ? これまでは俺ばっかりが杏を好きなんだと思ってたけど…男が怖い杏があそこまでしてでも俺を失いたくないって思ってくれたことに、俺…心が震えるほど感動してる。本当だよ」
「……」