蜜月なカノジョ(番外編追加)

「杏? どした?」
「えっ? あっ、いえっ! 何でもないです!」
「そう? でもなんか顔赤いけど。まさか寒さで熱なんか出てないよな?」

するりとナオさんの手のひらがうなじの辺りに触れて口から心臓が飛び出そうなくらいドキッとした。
っていうかこういうときは普通おでこじゃないんですかっ!

「あ。どんどん赤くなってる。面白い」
「…っ、も、もうっ!! 私で遊ばないでくださいっ!!」
「はははっ、だっていちいち杏の反応が可愛いから。つい」
「つい、じゃありませんっ!」

てへぺろみたいに首を傾げたってダメですっ!
っていうか妙に色っぽくて可愛いな、チクショー。

そんなくだらないやりとりを続けていると、ふと視線を動かしたナオさんが何かに気付いてハッと顔色を変えた。
ざぁっと一瞬にして笑顔が引いていく瞬間を目の当たりにして、私までそちらの方を振り返ってしまったくらい。

でも当然のようにそこに何があるのかは私にはわかりっこない。
ただたくさんの人で賑わってるだけ。

「………ナオさん?」
「…あ…いや。ごめん、何でもないよ」

何でもなかったように笑顔を作って見せたけど、その顔は明らかにさっきまでとは違って見えた。
どこかにまだ動揺が滲んでる、そんな感じ。

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