蜜月なカノジョ(番外編追加)
「あ~、楽しかった!」
「あんなにはしゃぐ杏を見るのは初めてだったな。連れて来た甲斐があって俺も嬉しいよ」
結局チェックインの時間を過ぎても遊び続けて、気が付けば辺りは薄暗くなり始めていた。
ゆるキャラ(ナオさん曰くブサキャラ)と一緒に写真を撮ったり、ご当地モノの食べ物をつまみ食いしたり。ちょっとお腹が膨れた分を消化するために雪ぞりゾーンで子どもに混じって滑りまくったりもした。
体の小さい私は子どもに混じっても違和感がなかったみたいで、あまりにも必死に遊ぶ私を見てナオさんはお腹を抱えて笑ってた。
「もうお腹ぺっこぺこです! 夕食が楽しみだな~」
「ははっ、さっきあんなに食べたのに?」
「あれはおやつですよ。本番はこれからです!」
ドヤってそう宣言する私にナオさんがプッと吹き出す。
あんなに寒かったのに、こうして手を繋いで歩いているだけで心も体もすっかりぽっかぽかだ。
「………黒崎くん…?」
イベント会場を抜けたちょうどその時、どこからか女性の声が聞こえてきた。
黒崎くんって…もしかして、ナオさんのこと?
そう思って振り返ると、たくさんの人に紛れて一人の女性がこちらを見ていた。
その顔は驚きに染まっていて…ハッとして隣に立つナオさんを見上げると、彼もまた同じように目を見開いて驚いている。
「立花…」
ぽつりと呟かれた一言に、忘れようとしていた鈍い痛みがズクンと再び浮かび上がってくるのを感じた。