蜜月なカノジョ(番外編追加)
「待って!!!」
逃げるように背を向けた私を女性の大きな声が引き止める。
と同時に全く同じタイミングで大きな手にガッシリと腕を掴まれた。
絶対に逃がさないと言わんばかりの強さで。
「あの…違うんです!」
「…え?」
それでも無意識に逃げようとしてしまう体が強制的にナオさんの腕の中に閉じ込められると、その一部始終を見ていた女性が涙を拭いながら懇願するように私に話しかけてきた。
一体どういうことなのかさっぱりわからない。
けれど、いわゆる修羅場的なものだけは勘弁してほしい。
どうやっても逃げられないことを悟ると、今から何を言われるのかとナオさんの腕の中で身を竦めた。
「私……嬉しいんです」
「……え?」
嬉しい…? って、何が…?
本気で何を言ってるのかがわからない。
激しく混乱する私同様、相手の女性も明らかに興奮を隠せていない。
「黒崎君に彼女がいるってわかって…本当に嬉しいんです」
「……」
それはあれだろうか。昔この人がナオさんのことを何かしらの形で傷つけたから、それに対する罪悪感がずっとあったとか。
だから立ち直ってくれたのなら嬉しいわとか、そういうこと?
その可能性を考えるだけで心のモヤモヤが大きくなっていく。