蜜月なカノジョ(番外編追加)
「当時の私はなんで自分がこんなめに遭うんだって、その怒りしかなくて。だからある日黒崎君にぶつけたんです。『あんたのせいで私の人生めちゃくちゃになったんだ!』って」
「……」
もし自分が同じ事を言われたらと思うだけで胸が痛む。
もちろんそう言いたくなるのは当然のことだし、彼女には何の非もない。
けれどナオさんだってもの凄く傷ついたはずだ。
…そして自分を責めたはず。
「その後逃げるように会社を辞めて…地元に帰ってきたんです。生活が落ち着いた頃にふと我に返ったら、なんであの時あんなことを言っちゃったんだろうってすごい後悔の念が押し寄せてきて」
「立花、お前は何も悪くないよ。俺がちゃんと…」
「そうじゃないの。あの時、ちょうど付き合ってた彼の浮気が発覚して。そんな時にあんなことがあったから…尚更イライラが募って。結婚するんだって待ち望んでた彼には裏切られるし、もうとにかく踏んだり蹴ったりで。黒崎君に怒ったのは半分が八つ当たりだったの。だからあの件をきっかけに逃げるようにこっちに帰って来ちゃった」
初めて知る事実だったのかナオさんは驚いているようだったけど、それでもすぐに首を横に振った。
「だとしても立花が俺のせいで嫌な目に遭ったことは事実だよ。あの女のやったことだとしても、俺に全く責任がないとは言えない。…本当に申し訳なかった」
「や、やだ、やめてっ! 黒崎君は悪くないんだから!!」
そう言って深く頭を下げたナオさんに、女性は激しく狼狽えている。