蜜月なカノジョ(番外編追加)
「杏さんはじめまして。南條涼子といいます。今日は私のたっての願いを聞いてくれてありがとうございます。私が黒崎さんにどうしてもあなたに会いたいってお願いしたの」
「あ…」
掴まれた両手はとても温かかった。
本当に嬉しそうに目を輝かせる涼子さんを見ていたら、ガチガチだった私の体からもようやく力が抜けていく。
「はじめまして。南條司といいます。今日は私達の我儘に付き合ってくださってどうもありがとう。何もないですが、よかったらゆっくりしていってください」
「っ、は、はいっ! ありがとうございますっ…! あの、これを…!」
「お気遣い有難うございます。有難く頂戴しますね」
ようやく手土産を受け取ってもらえると、ほーっと一仕事を終えたような達成感で満たされた。
実際はまだ家にも入っていないというのに。
「じゃあ入って」
「ありがとう。お邪魔します。杏、行こう」
「え? あ、はいっ…!」
優しく背中を押されて上を見ると、ナオさんがいつもの笑顔を浮かべて大丈夫だよと言わんばかりに頷いてくれた。
それだけで体の奥から力が漲ってきて、ようやく私も心から笑えた。
「はい、そこー。早速見つめ合ってイチャイチャしなーい」
直後すかさずカナさんの鋭いツッコミが入ってどっと笑われたけれど。