蜜月なカノジョ(番外編追加)

「…そう言えば杏さ、」
「は、はい…?」

いつの間にか足が止まり、ナオさんは私の両手を握りしめたままじりっと一歩近づく。追い詰められるような構図に、一体何を言われるのだろうとゴクンと固唾を呑んだ。

「…今日あいつに、南條に見惚れてたよね?」
「……えっ?!」

何か大失態でもやらかしただろうかと身を竦めていたら、言われたのは思いも寄らぬ一言で。

「最初あいつを見て固まってたでしょ? あれ見て妬けたよ」
「へ? …えっ?! …ち、違います違いますっ! 誤解ですっ!!!」
「いーや、間違いなくぽーっとしてた」
「いえいえいえっ! あれはそういう意味じゃなくて…!」

あれっ? なんかナオさんちょっとだけ酔ってる?
そういえば後半随分話が弾んでお酒も進んでたけど、ちっとも酔っ払ってるようには見えなかったのに!

そうこうしているうちに二人の距離はどんどん近づいて、やがて私の背中が電柱にぶつかって止まった。
目の前にいるナオさんとの距離、実に5センチ強。
っていうか唇がくっつきそうなんですけどっ…!

「駄目だよ。杏は他の男によそ見なんてしちゃ」
「し、してませんっ! さっきのはナオさんを含めた皆さんのオーラに圧倒されたって言うかっ」
「言い訳無用。あー、他の男に見惚れてた杏にはお仕置きが必要だな~」
「えぇっ!!」

お、お仕置きって!
しかも完全に誤解なのにぃっ!

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