蜜月なカノジョ(番外編追加)
「丸山っ!!!」
背後から呼び止める声に、ビクッと体が竦んだ。
ほんの一瞬足を止めてしまった隙に、目の前にさっきの男性が回り込んでいた。
「…やっぱり。丸山だろ? 俺のこと覚えてない?」
「……」
あぁ、どうして捕まっちゃったの。
朝礼が終わるなり一目散にスタッフルームを後にしたというのに。
…でも同じ職場で働くのならこの先ずっと顔を合わせずにいるなんて不可能だ。
「…丸山?」
「……あ…はい…覚えて、ます…」
蚊の鳴くような声でやっとのことそれだけ答えると、目の前の男性____
小笠原君は目に見えてほっと顔を綻ばせた。
「よかった…まさか同じ職場で働いてるなんて。びっくりしたけど嬉しかった」
「……」
二人の間にしん…と沈黙が落ちる。
俯いたまま視線を合わせようとしない私に気付いた彼が、どこか気まずそうに頭を掻いた。
「…あのさ、俺____」
「杏ちゃん?」
言葉を遮るように掛けられた言葉に、二人同時にハッとして顔を上げた。