蜜月なカノジョ(番外編追加)
このことをナオさんに話すべきかどうか、それを迷う時間はほとんどなかった。
何故なら___
「杏、何かあった?」
「…えっ?」
「朝はあんなに元気だったのに、帰ってきてからずっと浮かない顔してる」
「 ! 」
夕食を終えてソファーで一息つくなりそんなことを口にしたナオさんに、私は驚きを隠せなかった。
自分では完璧に平常心を装えているつもりだったのに。まさかいとも簡単にそれを見抜いていただなんて。
驚愕する私に、ナオさんはほんの少し苦笑いしている。
「俺を誰だと思ってるの? 仕事のこと以外はずっと杏のことだけ考えてるような男だよ? …ってこんなこと言ったらかなりヤバイ奴みたいだけど。杏の様子がおかしいことくらいすぐ気付くよ。…もちろん無理に話せなんて言わない。でも、杏が一人で抱えてることが辛かったり、俺に話すことでほんの少しでも楽になれたりするのなら、どうか一人で悩まないで欲しい」
「ナオさん…」
ふわっと優しく目を細めると、ナオさんはそのままゆっくりと顔を近づけた。
唇が触れる瞬間、自然を瞼を下ろしている自分がいる。
目を閉じたのと唇が重なったのは同時で、すぐに背中と後頭部に回された手に、私は力を抜いて全てをナオさんの身に委ねた。
ナオさんの温もりに触れながら、あらためて強く思った。
何があっても、この幸せを手放したりしないって。