蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…以前話したことのある高校の同級生が、ボヌールの新しいスタッフとして来たんです」
「___え?」
長いキスを終え、ナオさんの腕に抱かれながらぽつりと呟く。
「同級生って、もしかして…」
少し体を離して顔を覗き込んだナオさんに、こくんと頷いて肯定の意思を示す。
その瞬間ナオさんが驚きに染まると同時に、ほんの少し顔が強ばったのがわかった。
それも当然だ。
…だって、小笠原君は私の淡くて苦い初恋の相手だから。
それに…たった一度、事故のようなものだったとはいえ、キスもしている。
それを知っているナオさんからすれば面白くないのは当たり前だ。
私が逆の立場だったら絶対に心中穏やかでなんていられない。
「あの、ナオさん…」
「…ごめん。ちょっとびっくりして。年齢から言って小笠原のことか?」
「…はい。そうです」
「そっか…まさかあいつが…」
くしゃっと前髪を掻き上げながら、ナオさんがはぁ~っと深い溜め息をつく。
聞けば小笠原君はとある有名ホテルに併設されたカフェで働いていたところ、偶然それを見たナオさんが腕に惚れ込んで直々に引き抜いた人なのだとか。
葵さんも言ってたけれど、まだ若いのにバリスタとしての腕は相当いいらしい。
他の男の子と違って物静かなタイプだったけど、まさかバリスタになっていただなんて夢にも思わなかった。