蜜月なカノジョ(番外編追加)
「杏、強くなったな。…そして綺麗になった」
「…えっ?」
はーっと大きく息を吐きながら、何度も何度も髪を撫でられる。
その手つきは優しさの塊で、私は目を閉じてうっとりと胸に顔を埋めた。
「杏はどんどん強くなって、どんどん綺麗になっていく。正直、いつ俺の手からすり抜けていってしまうかって不安になるほどに」
「そんなこと、あるわけがないですっ!」
思ってもいない一言に、私は心外だとばかりに声を上げた。
「わかってる。決して杏の気持ちを疑ってるわけじゃないんだ。ただ、それくらい杏が変わっていってるってだけで。俺が杏を変えてるんだって思うと嬉しくてたまらないのに、一方でほんの少しだけ不安になる」
「…ナオさん?」
「ほんと、自分でも女々しくて嫌になるよ。でもそれくらい杏に溺れてるし、絶対に失いたくない」
するりと頬を撫でた手は、僅かに震えているような気がした。
「守りたいものができると人は信じられないほど強くなって、それと同じくらいに弱くなるって本当だったんだな」
「ナオさん…」
「何があっても杏を手放す気は無いから」
そう宣言したナオさんは、もうさっきまでの弱気なナオさんとはまるで別人で。
剥き出しにされた独占欲に、体の奥からえも言われぬような喜びが湧き上がってくる。
もっともっと、際限なく欲しがってほしいと。