蜜月なカノジョ(番外編追加)
「丸山っ!!」
お店を出てしばらく歩いたところで突然背後から聞こえてきた声に、自分でもびっくりするほど体が跳ねた。
ナオさんと幸せな日々を送るようになってすっかり平和ボケしてしまっていたけれど、元来こういう不意打ちには人一番敏感だったのが私だ。
そしてこの場面にはものすごく既視感がある。
「はぁっはぁっはぁっ…! 悪い、そんなに驚かせたか?」
「あ…」
振り返れば、きっとお店から全速力で走って来たのであろう小笠原君が、額に汗を滲ませながら私の元へと歩み寄るところだった。
近づく距離に、無意識に体が強ばる。
「急にごめん。でもこの二ヶ月の間丸山とまともに話すらできなかったから」
「……」
「…丸山、よかったらどこかで話できないかな?」
「えっ…?」
今、何て言った?
「公園でもファミレスでもどこでもいい。少し話す時間がほしいんだ」
「…っ」
まさか小笠原君がそんなことを言い出すなんて。このまま何事もなければいいと安心しきっていた私にとって、完全に想定外の行動だった。
けれど、もちろん答えは一つしかない。