蜜月なカノジョ(番外編追加)

「…あの、ごめんなさい。それは…」
「他のスタッフに聞いた。丸山、今も男性恐怖症なんだろ?」
「えっ…?」
「接客は女の人を中心にやってて、男性スタッフともほとんど話さないって聞いて…」

突然彼は何を言い出すのか。
明らかな不信感を滲ませた私に、小笠原君はすっと背中を伸ばして、そうしてゆっくりと頭を下げていった。

「なっ…?!」
「ごめんっ!!」

驚く私をよそに、彼は腰を折ったまま大きな声で謝罪の言葉を口にする。

「俺、丸山が男が怖いってのを知ってたのに。それなのに、あんなこと…。今でも男が怖い原因の一つに、きっと俺とのことがあるだろう?」
「 _____ 」

すぐに違うと否定すればよかった。
たとえ嘘でも、あなたのことは関係ないと言えば良かった。
けれどバカ正直に言葉を詰まらせてしまった私は、彼の言葉を肯定したも同然だった。

「俺、ずっとあの時のことを後悔してたんだ。なんであんなバカなことしてしまったんだろうって。あんな、丸山の気持ちを踏みにじるような真似を___」

今更関係ないと思っていても、当時のことを思い出すと胸がチクリと痛む。

「本当にごめんっ!!」

…でも、たとえそうだとしても、『今更』だ。

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