蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…あの、顔を上げてください」
長い沈黙の後そう言った私に、小笠原君はようやく体を起こしてくれた。
ちらりと見えた苦しげな表情にまた胸が痛みそうになったけれど、そうなる前に僅かに視線をずらしてそれ以上は直視しないように努めた。
「あの、男性恐怖症なのは否定しませんけど、小笠原君とのことは関係ないですから。昔も話したように、本当に色んなことがあっての結果なので、小笠原君のことがその原因になってるわけじゃないんです。だから全然気にしないで___きゃっ?!」
突然ガシッと掴まれた左手に、心臓が止まりそうなほど縮み上がった。
それと同時に男の人に触られているという事実に、底知れぬ恐怖が湧き上がる。
「やっ…はなしてくださっ…!」
「なんで? なんで敬語なんて使うんだよ? 俺たち同級生だろ? もし丸山が言う通りあの時のことが何の関係もないんだとしたら、なんでそんな他人行儀な態度なんてとるんだよ?! やっぱり、あの時のことが影響してるんだろう?」
「…っ、やっ、やだっ、はなしてっ…!」
振り払おうとしても微動だにしない強い力に血の気が引いていく。
怖い、
怖い、
怖い。
誰か、助けてっ…
…ナオさんっ、ナオさん_____!!
「俺、あれから死ぬほど後悔してた。最低最悪のチキン野郎なんかくたばっちまえ!って。卒業してから、一度だって丸山のことを忘れたことなんてなかった。いつだって思ってた。もしいつかお前に会えるときがくるのなら、その時は真っ先に謝るって。土下座でも何でもいい。俺の全身全霊をかけて丸山に謝って、そして______い゛っ?!!」