蜜月なカノジョ(番外編追加)
意識が遠のきそうになったまさにその時、突然小笠原君がカエルが潰れたような声をあげ、それと同時に左手を拘束していた力が消え去った。
「嫌がる女の子に無理強いするなんて感心しないわねぇ」
次の瞬間ふわりと耳を撫でた声に、それまでガチガチに震えていた体から信じられないほど力が抜けていくのを感じた。
そのまま自分で立っていることすらままならなくなったのを予想していたかのように、ふらついた体にするりと大きな手が回される。
___あぁ、この人はやっぱり私にとっての光だ…
「え…オー、ナー…?」
右手を擦りながら顔を上げた小笠原君が驚きに染まる。
この状況でいきなり職場のオーナーが登場したともなれば当然だろう。
「悪いけど声が大きいから聞こえちゃったんだけど、どう見ても彼女嫌がってたから。黙って見過ごすなんてできなかったわ」
「なっ…?!」
「ごめんごめんとか言いながら、やってることは完全に真逆。杏ちゃんが嫌だ離してって何度も何度も言ってたの、あなた聞いてた?」
「…っ!」
ぐうの音も出ないとはこのことで、小笠原君はぎりっと唇を噛みしめている。