蜜月なカノジョ(番外編追加)

グイッと手を引かれると、そのままビルとビルの隙間に滑り込むようにして押し込まれた。

「ナオ、さっ____」

最後まで言い切ることは叶わず、ボフッ!!とすごい勢いで体がぶつかった。

___最近はめっきり回数が減っていた、懐かしのぼよんぼよんクッションに。

「くっそ、あのガキ、一発殴ってやりてぇ…!」

ぎゅうっと抱き込まれながら降ってきた物騒な言葉に、身動きがとれないながらもぶんぶんと必死で首を横に振る。

「だ、だめです! 絶対にだめですっ!! そんなことしちゃいけませんっ!!」
「杏をあれだけ怖がらせたんだ。許せねー」
「私なら大丈夫ですから! こうしてナオさんが助けてくれたっていうだけで、もう少しも恐怖は残ってないですからっ!!」
「……」

本気で訴えているのが伝わったのか、しばらくしてふぅっと息を吐いたナオさんの体から力が抜けていく。
やがてコツンと額を合わせた時には、もう怒りのオーラは消え去っていた。

「…さっきわざと止めに入っただろ」
「…だって、ナオさん素を見せようとしてましたよね?」
「別に構わない。俺はいつ元に戻っても構わないって言ってただろ?」
「そうですけどっ、でも、ああいう形でばらすのは良くないと思うんです!」
「どうして」
「だって、公私混同だって誤解されるのは嫌なんです! そりゃあ、全くないかって言われたら…あれですけど、ナオさんが仕事に対してどれだけストイックなのかは知ってます。そんなナオさんが、勢いでばらして皆さんに誤解されるようなことだけは、絶対にあって欲しくないんですっ!」

ましてやまだナオさんのことをほとんど知らないと言っていい、しかもあんなに興奮状態だった小笠原君の前で暴露なんてしてしまったらどうなることか___

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