蜜月なカノジョ(番外編追加)

波乱の告白




「これ、よかったらどうぞ」

コトンと置かれたカップに、テーブルに座っていた面々がきょとんと顔を上げる。見ればバリスタの格好のままの小笠原君がトレーを片手に立っていた。
見比べるように今一度手元に視線を戻すと、目の前にはまさに職人技と言うに相応しいデザインカプチーノがずらりと並んでいる。

「今新しいラテアートの練習中なんですけど、完成形にはまだまだなので。もしよかったら試作品を飲んでもらえると助かります」
「えーーっ、いいのぉっ?! すっごく嬉しいっ!!」
「ありがとーーっ!!」

それぞれに置かれたデザインを見ながらキャーッと沸き立つ女性陣を横目に見ながら、私はただ一人何とも言えない気持ちを抱えながら小さく溜め息を呑み込んだ。

「丸山も。よかったら感想聞かせてくれると助かる」
「あ…うん…」
「じゃあ、ごゆっくり」

とりあえずイエスと言わせたことに満足したのか、小笠原君はすぐに持ち場へと戻って行ってしまった。

「ちょっとちょっとぉ~? 杏さんだけ名指しでご指名ですかぁ~?」
「えっ? ちがっ、そんなんじゃ…!」
「えー? だって私達には何にも言ってくれなかったのに~。しかも! ほら見て、杏さんのデザインだけハート入ってるしぃ~!」
「あーっ、ほんとだぁっ!」

どれどれと覗き込んだ後、またしてもきゃーっと黄色い声が飛び交う。
とんだありがた迷惑な展開に、今度は大きな溜め息を止められなかった。

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