蜜月なカノジョ(番外編追加)
「入るわよー?」
ちょうどその時、コンコンとノックする音と共にナオさんが入って来た。
オーナーを見るなり全員が時計を見てぎょっとする。
そんな中私だけが全く別の意味でぎょっとしていた。
まさか…聞かれてない、よね…?
「やばっ…いつの間にこんな時間に! もう戻らなきゃ!」
「って、これどうすんの?!」
「がぶ飲みしなさい! 残すわけにもいかないんだから! ほらっ!」
「えっ、えぇっ?!」
各々全く手付かずのカプチーノを慌てて飲み込むと、超特急ながらも「おいしい!」という言葉がそこかしこから零れ出る。
唯一のハート入りのそれに躊躇いつつも、大事なボヌールで作られたものだと思えば無碍にもできず、右に習えで私も一気に流し込んだ。
う…やっぱり美味しい…!
「杏ちゃん、悪いんだけど備蓄品の整理を手伝ってもらえない?」
「えっ?」
全部を飲み干したタイミングでナオさんがクルクルと倉庫の鍵を回しながらそんなことを口にした。
「じゃあ私達先に戻ってるから! オーナー、お疲れ様です!」
「はい、お疲れ様。午後からもよろしくね~」
「はいっ!!」
オーナー直々の激励に瞳を輝かせると、私以外の全員が慌ただしくホールへと戻っていってしまった。