蜜月なカノジョ(番外編追加)
『____もしもし、杏っ?! よかった、やっと繋がった…!』
「っ…ナオさっ…」
何を言えばいいのかもわからない。
頭は未だ大混乱中で、しかも今は変態から逃げるだけで精一杯な状況で。
しゃくり上げるばかりでまともな言葉を発することもできない。
『杏っ、あなた今どこにいるの!』
「ナオさんっ、ナオさんっ…!」
それでも私は名前を呼び続けた。
『杏、落ち着いて、あなた今_____』
「あ~、やーっとおじょうちゃん見ぃつけた~! 全く逃げ足が速いんだから~。ダメでしょう、おじさんのこと置いて行っちゃ」
『 ?! 杏、今の声は何?! まさか今___ 』
「あれ~、誰と電話してるのぉ? そんなのいいからおじさんと仲良くしようよ~」
「いやぁっ、離してぇっ!!!」
「うわっ?!」
『杏っ?! 杏っ!! 杏っっっっっ!!!!』
後ろから伸びてきた手をどこにこんな力が残っていたのだろうというくらいの勢いで振り払うと、スマホを握りしめたままひたすら走った。
走って、走って、走って、走って、ひたすらに走った。
___心の中でただ一人の名前を叫び続けながら。