蜜月なカノジョ(番外編追加)

「な、ナオ____直斗さん…」

咄嗟に名前で呼んだ私に、道行く人が皆振り返るほどの眉目秀麗な男性がふわりと目を細めて、そして私の隣へと近づいて来る。
一体いつの間に男性の姿に? と一瞬過ぎったけれど、そんなことは取るに足らない些細なことに思えた。

「ただいま」
「お、おかえりなさい…」

やがて隣に立ったナオさんは、そのまま私の腰を引き寄せてチュッと頭のてっぺんにキスを落とした。
目の前でそれを見ていた小笠原君が息を呑んだ。

人前で…! と盛大に焦ったのは事実だけれど、そうされること自体嫌ではない私は、ナオさんに肩を抱かれたまま抵抗することはしなかった。

「…こちらは?」
「あ…」

ナオさんが一瞥すると、その視線を真正面に受けた小笠原君がビクッと肩を竦めた。平均的な身長の彼と長身のナオさんはおそらく十センチ近くは差があるに違いない。
上から、しかもとんでもなく整った顔立ちの男性に一睨みされれば、彼でなくとも体を縮こませてしまうのは当然のことだろう。

「あの…職場の、同僚で…」

オーナーに向かってこんなことを言うなんてとんだ猿芝居だ。
けれど今ここにいるのが『直斗さん』である以上、正体を明かすわけにはいかない。
多分ナオさんはいつばれてもいいって気でいるんだろうけど。

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