蜜月なカノジョ(番外編追加)
「それはそれは。いつも杏がお世話になっています」
「えっ、あ…」
深々と頭を下げたナオさんに、小笠原君が激しく狼狽えている。
「…それで、今日はどういったご用件で?」
「…っ!」
けれど顔を上げたと同時に向けられた射貫くような視線に、再び彼は言葉を失った。
___そこに滲むのは明らかな牽制。
「……いえ、偶然会ったので、声を掛けただけです」
長く言葉を詰まらせていた彼がやっとのこと出したのは弱々しい声で。
「…そうですか。これからも同僚として杏をよろしくお願いします。杏、それじゃあ帰ろうか」
「あ、はい…」
エスコートされるように背中を押されながら、思わず後ろを振り返ってしまう。
見れば既に小笠原君もこちらに背中を向けていて、その後ろ姿は目に見えて落ち込んでいた。肩をがっくりと落として、トボトボという効果音が相応しい足取りで。
「まさかこんなところにまで来るとは…。杏、大丈夫だったか?」
エントランスに入るなり上から下まで入念に無事を確認し始めるナオさんに、我に返った私は慌てて首を振った。
「だ、大丈夫です! なにも、何もなかったですから!!」
「…でも告白されてたよな?」
「 !! 」
核心を突いた一言に、ぐっと言葉に詰まる。