蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…嘘だよ。杏は何も悪くない。ただ単に俺が嫉妬して意地悪言っただけだから。ごめんな?」
そう言って優しく頬に触れた手に、完全に緊張から解き放たれていく。
「あいつ、まさかここまでつけて来たのか? だから___」
「そ、それはないと思います! 正直、私も同じ事を考えたんですけど、多分、それはないと…」
あの顔は嘘なんか言っていない。
…そうであってほしい。
「…そっか。まぁいずれにしてもここに住んでるのはばれたし、今以上に用心はしておくように。…まぁ、あの感じだともう無駄な悪あがきもなくなると思うけどな」
…確かに。
はっきり説明したわけじゃないけど、私とナオさんがどんな関係であるかは言わずもがなだろうし、それが彼に伝わったことはあの酷い落ち込み方からも一目瞭然だ。
罪悪感は消えないけれど、彼の気持ちを受け入れられない以上こうなったことには心底ほっとしている。
「…ところでナオさん、今日はどうしてその格好で帰ってきたんですか? 朝はナオさんでしたよね?」
「___え? あ、あぁ…ちょっと急遽こっちの方でないと駄目な仕事が入ってさ」
「…? そうですか。お仕事お疲れ様です」
なんだか引っかかるものを感じたけど、ナオさんにはナオさんの事情があるのだろう。