蜜月なカノジョ(番外編追加)

「ナオはもう少しで来ると思うから」
「は、はい…」

こそっと囁かれた左耳が熱い。
多分顔も赤くなっているだろう私を、葵さんはグラスを傾けながら微笑ましそうに見ている。

ナオさんは今日は別の仕事でスケジュールが埋まっていて、それが終わり次第ここに来ることになっている。葵さんがこうしてここに来てくれたのも、きっとナオさんの代わりに私を守るためなのだと思う。
本当に本当に、心からの感謝の気持ちしかない。

葵さんは私がすぐに謝ったりお礼を言い過ぎたりするのをあまり良く思ってないから、心の中で何度もありがとうを言いながら、またより一層仕事を頑張ろうと固く決意するのだった。

「杏さ~ん! 今日こそ噂の彼氏のことを教えてくださいよ~!」

どどっと反対側から倒れ込むようにしてやって来たのは一つ年下の女の子だ。バイト歴は私とほぼ同じなのだけど。

「だいぶ顔が赤いけど大丈夫…?」
「だぁいじょうぶですよぉ~! それよりー、杏さんの話を聞きたいんですー!」
「私の話って…」
「決まってるじゃないですかぁ! 杏さんがだーーい好きなカ・レ・シの話ですよぉ!」
「ちょっ…声が大きいよ…!」

もごもごと口を塞いだけれど、間違いなくこの部屋中に響き渡ったはず…!
ひぃっ…! やっぱり皆の視線がこっちに向いてる~!!

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