蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…あれ…?」
お手洗いから戻って来ると、部屋の前の壁にもたれ掛かるようにして座り込んでいる男性の姿が目に入った。あの服装は…
「小笠原君…?」
小さく呟いた声に、ぴくりと俯いていた顔が上がる。
「…丸山」
「だ、大丈夫? 具合が悪いの…?」
顔を真っ赤にしてぐったりしている同僚を見てさすがに放っておくわけにもいかない。襖一枚を隔てたところには皆もいるし、いくらなんでもおかしなことは起こらないはず。
さっきチラ見した時に彼はかなりのハイペースで飲んでいた。
その理由については全く心当たりがないとも言えないだけに、ほんの少し罪悪感を感じているのも事実だ。
「動けないの? 誰か呼んでこようか…?」
男の人でも連れて来た方がいいだろうかと振り返ったところで、ぐっと手首を掴まれる。
「えっ…?」
「丸山…」
見れば今にも泣きそうな顔で小笠原君が縋るように私を見上げている。
ズキンと胸が痛んだけれど、これ以上踏み込むことは危険だ。
「小笠原君、離し…」
「嫌だ」
被せるような強い否定に息を呑む。