蜜月なカノジョ(番外編追加)
「ふ~、あっついあっつい。夏の胸パットって地獄ね~」
夜の道を進みながら、ナオさんが空いた手で胸に手を突っ込んで豪快にパットを取り出していく。道行く人がぎょっとしているけど、そんなことはどこ吹く風だ。
「あ、あのっ、ナオさんは、一体いつからっ…?」
漫画や映画よりもよっぽどドラマチックな展開に、正直これが夢なんじゃないかとすら思う。
「んー? そうだなぁ、正直、杏を好きだって自覚した時にはもう結婚も考えてたよ」
「えっ?!」
「あ、引いた?」
「そ、そんなことはっ…!」
ないけど、びっくりはした。
まさかそんなに早くから結婚を意識してただなんて。
「そりゃそうだよ。だって俺は男を捨てるつもりだったんだから。こんな俺が意識を変える時点でそこまで考えてるに決まってるだろ~」
そ、そっか。言われてみれば確かにそうかも…
「でも杏の気持ちを無視して暴走するつもりはなかったから。少しずつ時間を過ごして、いつか杏も同じ方向を向いてくれたらいいなって、ずっと待つつもりでいた。でも杏と恋人同士になれて、毎日が幸せ過ぎて。そんなやせ我慢も限界なくらいに名実ともに俺のものにしたいっていう欲求が抑えきれなくなって__」
ポリッと照れくさそうに鼻を掻く仕草が愛おしい。