蜜月なカノジョ(番外編追加)
「自惚れなんかじゃなくて、杏も俺と同じ気持ちでいてくれてると思えたから…だからきちんとした形でプロポーズしようって。指輪をオーダーしたんだ」
「あ…もしかして…」
「そう。あいつがマンションの前にいたあの日、本当は指輪を取りに行った帰りだったんだ」
やっぱり。どうして男の人の格好に変わったんだろうって不思議だったけど、そういうことだったんだ。
「杏と結婚することになればさすがに従業員には全てを話さなきゃならないし、だったら今日全部を打ち明けようって、そう思ってた」
「だから珍しくパンツスーツだったんですか?」
素朴な疑問を口にした私に、ナオさんが苦笑いする。
「…さすがに男に戻った後にスカート履いて帰るのはまずいかと思ってさ。警察に連行でもされて杏と結婚できなくなったらシャレにならないだろ?」
「…ぷっ!」
その姿を想像しただけで吹きだしてしまった。
「本当は全員に全てを打ち明けて、二人きりになって落ち着いてからプロポーズするつもりでいたんだけど…。あいつに迫られてる杏を見たらそういうのが全部ぶっ飛んで…。こうなったら全員を証人にしてやる!って。…ごめんな? 一生に一度のプロポーズがあんなんで」
申し訳なさそうに眉を下げたナオさんに、私はぶんぶんと首を振った。