蜜月なカノジョ(番外編追加)
相も変わらず元気のいい女性陣に笑いながら、帰るべく自分の荷物も手にしたところでくんっと服の裾が後ろに引っ張られた。
「…え?」
見れば依然として顔を真っ赤にした杏が俺の服を掴んでいる。
「杏? どうしたの?」
「…どこ行くんですか」
「えっ? どこって…帰るに決まってるでしょう?」
「っ、ダメです! どうして帰っちゃうんですかっ!!」
「えっ…」
途端にウルウルと目に光るものを溜め始めた杏に、こっちの方が狼狽えてしまう。
「ちょっと杏、どうしたの?!」
「ナオさんのバカぁ、私を置いていくなんてひどいですっ…」
「えっ?」
いやいやいや。なんかおかしくないか?
杏を置いていく? 天地がひっくり返ってもあるわけないだろうが。
っていうかどう考えても酔っ払い確定だな、こりゃ。
「ふふっ、杏ったら可愛いこと言ってくれるんだから。だーいじょうぶ。私が杏を置いて帰るわけがないでしょう? それどころか早く連れて帰りたくて仕方がなかったんだから」
杏だけに聞かせる甘ったるい声に、またしても葵がうへぇとうんざりそうに顔をしかめた。