蜜月なカノジョ(番外編追加)
「ナオさん…すき…ナオさん…」
チュッチュッと絶え間なく聞こえる音がどこから響いているのかもわからない。
ただ、自分はもしかして知らない間に天国に連れて来られたのではないかとぼんやりと考える。
「ナオさん…」
「…っ!!!」
「きゃっ?!!」
だが生温かい感触が首筋をなぞった瞬間、弾かれたように現実へと引き戻された。
ガバッといきなり体を起こした俺に、当然のように杏が後ろへと倒れていく。
すんでのところでそれを受け止めると、驚きに目を見開かせた杏を凝視した。
きっとその目は血走っているに違いない。
だがこれがそうならずにいられるかっ!
「な、ナオさ____」
「帰ろう。今すぐに」
「えっ? きゃあっ?!!」
腕を回すと、まるで米俵を担ぐかのようにヒョイッと杏の体ごと持ち上げた。
突如反転した視界に杏はパニックに陥っているが、そんなこと知ったこっちゃない。
「悪いが先に帰らせてもらう」
「…は、はい…お疲れ、さまでした…」