蜜月なカノジョ(番外編追加)
「や、だっ…」
「…杏?」
「やだ、やだっ…!」
「杏? 大丈夫だから。落ち着いて、ね?」
子どもみたいにイヤイヤ首を振るだけの私をそっと諭してくれる。
…そう、私の知るナオさんはいつだって優しい。
「どこにも…行かないで…」
「…え?」
「どこにも、行かないでっ…! このままナオさんがいなくなったら…私っ…!」
拙い言葉で必死に訴えると、ナオさんはキュッと今にも泣きそうに顔を歪めた。
「…わかったわ。杏、ありがとう。体が温まって落ち着いたらきちんと話しましょう。私は逃げも隠れもしないから…ね? とにかく今は少しでも早くお風呂に入ってちょうだい」
「…はい」
今度は促されるままに素直に頷くと、私は全ての始まりとなったバスルームの中へと入っていった。