蜜月なカノジョ(番外編追加)


「…………ナオさんは……男の人、なの…?」


絞り出すように口にした言葉に、ナオさんの手がピクリと止まった。
乾き終えた髪がスルリとその指の間を落ちて私の頬にかかる。手にしていたドライヤーを横に置くと、ナオさんは私の正面に回ってその場に跪いた。
その瞳は真っ直ぐに私を見つめている。

「……そうよ。私は男。…今まで黙っていてごめんなさい…」

とても神妙な面持ちで、それでもはっきりとナオさんは認めた。
そういう答えしか返って来ないとわかっていても、その事実はやはり私にショックを与えた。思わず顔を伏せてしまう。

「……ど…して…? 私を…騙してたんですか…?」
「___っ、違うっ! そんなつもりじゃ…!」

涙声でそう尋ねた私に腰を浮かせて激しく否定しようとしたナオさんは、けれどそれ以上の言葉を呑み込んでガックリと項垂れてしまった。

「…ううん。杏の言う通りだわ。どんな理由があっても私が嘘をついていたという事実は変わらない。しかも…杏が一番恐れていたことを隠してたんだから」
「……」

重い重い沈黙が2人を包み込む。

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