蜜月なカノジョ(番外編追加)

どうしていいかわからずに俯くと、視界の隅で悲しげに微笑むのが見えた。

「…でも安心して。だからって杏を無理矢理どうこうしようだんて思ってないから」
「……え?」
「当たり前でしょ? 杏のことを守りたいと思ってる私が杏の気持ちを無視してそんなことするはずがないじゃない。確かに私は杏のことが好き。大好き。でもね、一人の女の子としてだけじゃなく、一人の人間として杏のことが好きなの。だから杏が苦しんでるなら助けたいし守りたい。私といて笑ってくれるなら一緒にいたい。たとえ『男』としての自分の気持ちが通じることがなかったとしても、私は『ナオ』としてずっと杏と一緒にいたいって思ってた。…もちろん今も」
「ナオ、さん…」

…どうしてだろう。涙が止まらない。
この涙の理由わけなんて自分でも説明できない。
けれど、胸がぎゅうっと締め付けられるように苦しくて、切なくて、そして…

「杏…」

ポロポロと涙を零す私を悲しげに見つめているナオさんは、その手を伸ばしかけたところで何かを堪えるようにグッと握り拳をつくると、そのまま静かに自分の膝の上へと下ろした。
その姿にすら涙が溢れて。

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