蜜月なカノジョ(番外編追加)
ドクンドクンという音がいつの間にか重なり合っていて、もうどちらのものなのかもわからなくなってしまった。
耳に、そして全身に響くその鼓動が心地よくて、まるで子守歌を聴いているようで、ふわふわと浮いているような錯覚に陥っていく。
もっともっとこの音を聞いていたくて、無意識に自分の手が厚い胸板の上を撫でていく。直後ピクッと彼が動いていたことにも気付かずに。
私は極度の男性恐怖症だ。
だというのにこの状況は一体何だというのだ。
触ることはおろか、目があうだけでも体が竦むほど怖くて仕方がないはずのその存在に、自ら触れたくてたまらないだなんて。
本当にどうかしてる。
あぁ、でもこの腕の中は…
「……気持ちいい…直斗、さん…」
「___っ?!」
もうほとんど眠りかけていたと思う。
だから何を口ずさんだのかも覚えていない。