蜜月なカノジョ(番外編追加)
「おはよう、杏」
「お…はようございます」
朝から爽やかすぎる、そして美しすぎる笑顔はいつもなら眼福眼福と拝むところなのに。今日は直視できずに視線を横にずらしてしまった。
「ひっ…!」
はずなのに、何故か逸らした先にドアップのナオさんが現れて心臓が止まりそうになる。
「どうしたの。どうして目を逸らすの?」
「そっ、逸らしてなんか…!」
「本当? じゃあちゃんと私を見て」
「…!」
言うなり両手で頬を挟まれた私は完全に逃げ道を封鎖されてしまった。
少し腰を屈めたナオさんとの距離はわずか50センチほど。バックンバックン破裂しそうな心臓の音は、顔に張り巡らされた血管を伝ってばれていると思う。
でもそんなの仕方ないじゃない。むしろこの状況で失神せずに立てている自分を褒めてあげたいくらいだ。
だって、だって、私は昨日この人と……キ、キ……
「……ふふっ、今日もかーわいい。じゃあご飯にしましょ」
「…へ? え?」
じーーっと見つめていたナオさんが突然フッと表情を緩めたかと思えば、リンゴよりもよっぽど真っ赤に熟れた私の頬にチュッとキスを落とした。すぐに何事もなかったのようにルンルンとキッチンに戻ったナオさんの足取りは軽い。