蜜月なカノジョ(番外編追加)
唇に何かが触れた。柔らかな、何かが…
「杏」
「な…おさ…」
掠れた声はそのまま呑み込まれてしまった。
____ナオさんの唇に。
チュッチュと小さなリップ音と共に確かに触れる唇。
目を見開いたまま硬直する私の視界に映るのは、目を閉じているにもかかわらず尋常じゃない色気がダダ漏れのナオさんのドアップ顔。
………なに、これ。
………なにこれっ???!!!
「な、なおさっ…んっ…?!」
何とか喋ろうと口を開いたと同時に侵入して来た謎の物体。
柔らかくて熱い未知の生物が私の口内で動き回る。わけがわからなすぎてギュッと目を瞑ると、途端にあちらこちらに星が散っていった。
「んんっ…は、っ…!」
時間の概念も何もかも吹っ飛んでしまった頃にふっと体が軽くなる。ふらふらの体はナオさんの手に支えられて立っているようなもので、いつの間にか滲んでいた涙で前もよく見えない。
ただわかるのはナオさんの口元が濡れて妙に艶めかしいということだけ。
「…可愛い杏、大好きよ。じゃあ行ってくるわね」
ペロッと濡れた唇を舐めると、ナオさんは尚も呆然と立ち尽くす私の唇にチュッと音をたてて颯爽と出て行ってしまった。