蜜月なカノジョ(番外編追加)

「………………」

何が起こったのか全くもって理解できていない私は、支えを失ったことでずるずるとその場に座り込んでしまった。
震える手で恐る恐る触れた唇。そこは何故か濡れていた。
…さっき見たナオさんと同じように。

……今何が起こったの?
何あれ、なにあれ。何、何…

「………キ…ス…?」

キスっ???!!!

ついさっき昨日のことは夢だったと結論づけたばかりなのに、その直後に何の前触れもなく起こった出来事に思考回路が全くついていけない。これもきっと夢だと頬を思いっきり抓ってみれば、目が飛び出そうなほどに痛くて悶絶した。


結局ナオさんの真意がわからないままその日は何をしても上の空。
しかも夜遅くに帰ってきたナオさんはまた何事もなかったかのように至って普通だった。当然キスの話題になんか一切触れられず、一人大混乱に陥る私をよそに、いつものようにハグをしてほっぺにチューをして、そしてぎゅーっと抱きしめたまま眠る。本当にいつも通り。
突然キスをされたということを除けば。

まともに眠れずに迎えた次の日、やっぱりあれは夢だったのだろうか…?
再びそう結論づけようかとしていたその矢先、また出掛けにナオさんがキスをしてきたのだ。パニックを起こす私を宥めるように優しく優しく背中を撫でながら、それでも決してキスをやめようとはしない。

そうして私の呼吸が限界に近づいた頃にまた何事もなかったかのように出勤していく。呆然としたままの私をその場に残して。

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