蜜月なカノジョ(番外編追加)
「ナオさん…?」
というより正確には『直斗さん』だ。
何故なら彼はスーツを着て『ナオ』としての装いを何一つしていないから。
どこからどう見ても文句なしのイケメンスーツ姿の男性に、近くをすれ違う女性がチラチラと振り返っている。
「なんで…? 朝出る時はいつも通りに…」
というかああやって普通に男性姿になることに驚いた。
そりゃあ本来男の人なんだから当たり前なのかもしれないけど、少なくとも私が知るナオさんはいつだってナオさんだったから。
こうして自分の知らないところで素の自分に戻っていたのかと思うと…何故だか胸が苦しくなって咄嗟に服の上から押さえた。
と、その時彼に近づいて来た人物にハッと目を奪われる。
「______」
ビルから出てきた女性が迷うことなくナオさんの元へと向かう。そうして彼が振り返るのと同時に笑いながら肩に手を置いた。
ナオさんはそれを振り払うでもなく同じように笑っている。
ナオさんよりは低いものの、それでもかなり長身の女性は胸下までの長い髪を揺らしてスタイルも抜群。遠目でも美女だとわかるほどに凄まじいオーラを放っている。
美形のナオさんの隣に並んだ姿はまさに美男美女。
どこかの絵画を切り取ったような美しい光景に、さっきとはまた違った意味で周囲が羨望の眼差しを向けていた。