春色のletter
その後も、いくつかの部活の先輩に声を掛けられて、中途半端な返事を返した。
絵里はブラバンのプラカードを見つけると、初心者でも大丈夫かどうか尋ねていた。
私は、その姿を目に捉えながらも、別のコトを考えていた。
「夜梨!私やっぱりブラバンに入るよ」
絵里に手を引っ張られて、彼女の顔を見た。
「そっか。良かったね」
「うん」
絵里はこれからの高校生活がバラ色だと、満面の笑顔で主張していた。
私は絵里と一緒にいようとこの学校に来たけど、別の部活でいいのか少し躊躇もしていた。
傍にいたい。
近すぎちゃいけない。
そんな気持ちも、奥手な私の思春期の目覚めなのかもしれなかった。