春色のletter
絵里と別れた後、3階の教室へ向かった。


1年2組の教室はFの字の下、南側なので、しばらく他のクラスの前を通り、北側階段から3階へ上った。


上ってすぐ左の教室がイラスト同好会が活動する教室。


廊下側の窓は、下は磨りガラスだけど上の方は普通のガラス。


私が少し背伸びをすると中の様子が見えた。


空き教室と言っていたが、机はそのまま普通に置かれていて、適度に散らばって座った10人くらいの生徒が黙々と絵を描いていた。


一番奥の窓際の席にハルがいた。


ちょっと顔を上げると、私が見えたかもしれなかったけど、彼がそうすることはなかった。


振り返ると、その廊下は静かだった。


きっかけをつかめず、ドアを開けるのをためらった。


私はしばらくハルが絵を描くのを見ていた。
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