春色のletter
「みーちゃん…」


その声に振り向くと、後ろで佐伯さんが両手を前に出したまま、泣きそうな顔をしていた。


「えっと、美沙ちゃん、お父さんがなんか泣いてるよ?」


「あ、まだだっこしてあげてないからね」


美沙ちゃんは少しおませな感じでそう言うと、佐伯さんを置いたまま、私をそのままゆっくりと引っ張っていった。


リビングに入る時、佐伯さんを見たら、床にがっくりと手を付いていた…


(あのね…)


私は苦笑したが、ふと、既に夕方の落ち込みが軽くなっているのに気が付いた。


苦笑が微笑みに変わった気がした。
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