春色のletter
ハルは私がすぐ傍にいたことに驚いていた。


自分は今は遠い場所に移ったと書いてあった。


その文章からは、もう少しで会えたのに…


その想いが滲んで見えた。


彼は、ちょっとしたトラブルで、急遽身を隠したらしい。


この手紙を盗み読まれたら大変だから、今いるところは言えないと。


「変なの。ハルからの手紙を盗み読めるなら、居場所バレてるってことじゃない」


まあ、私の手紙が転送される以上、そっちで盗み読まれるかもしれないな…と、その時はあまり気にしなかった。


実家も、トラブルの相手にバレているので帰れないと書いていた。


今、彼がいるところは結構田舎で、似たように、何かから逃げてきた人々を匿う施設らしいが…

ふと気が付いた。

「ハル…消印、小倉南になってるよ」


私は苦笑した。


最初の手紙も見てみたが、薄い消印はやっぱり小倉南だった。


(そっか、とりあえず北九州に帰ったんだ。八幡じゃないってことは、実家じゃないのか…)


どうやってそういう場所を見つけたのかな?


ほとぼりが冷めるまで、そこにいるようなことを書いていた。


「トラブルって…なんだろう?お金かなぁ…?」
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