春色のletter
司会の女性が出てきて、イベントの開催を告げると、一組目のバンドの演奏が始まった。


各バンド20分くらいだったので、飽きずに続けて聴けた。


バンド形式、ピアノの独奏、ギターの弾き語り、いろいろな形で音楽を楽しんだ。


何組目だったろう。


「あ、夜梨子先輩!」


朋子ちゃんが私の腕を掴んだ。


「あれ、柴田先輩ですよ」


「え?」


次に出てきたバンドのドラムスは、ハルだった。


よく見たら、あの文化祭の時のメンバーだった。


「ハル…」


「柴田せんぱ~い!」


朋子ちゃんが大きな声で手を振った。


ハルがそれに気付いて、こっちを見た。


視線が合った。


その表情が驚きから笑顔になったのが見えた。


私は控えめに右手を挙げた。


彼らの演奏を聴いていたはずなのに、何を演奏していたのか覚えていない。


その時の私は別のことで頭が一杯だった。


あっという間に演奏が終わって、彼らは次のバンドと交代した。
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