春色のletter

私はその背中に軽く手を振った。


「じゃあ、先輩、帰りましょう」


「あ、うん」


反対に歩き始めた朋子ちゃんに付いていこうとしながら、もう一度振り返った。


ちょっと先でハルが立ち止まっていた。


私も立ち止まると、その背中を見つめた。


彼が振り返った。


戸惑っていると、彼が右手を耳元に充てて、口を動かした。


『電話する』


そう動いていた。


私は大きくうなずいた。


彼は軽く手を挙げると、仲間の方へ走っていった。


「先輩、どうしたんですか?」


朋子ちゃんが振り返って見ていた。


「あ、ごめん!」


私も彼女の方に走っていった。


零れてしまう笑顔を隠しながら。
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