春色のletter
「曲が浮かんだの?」
「いえ。横で恋の花が咲いていたので」
「あ、なるほど」
私は笑った。
マイペースな感じなのに、ちゃんと周りを見ているらしい。
「夜梨子さんは、持ち帰り仕事ですか?」
「ああ…、ううん」
私が首を振ると、彼女がきょとんとした。
「淳さんと一緒かな?」
「そうなんだ」
彼女はくすっと吹きだした。
「良かったら、うちに寄る?」
「あ、いいんですか?」
「いいよ。近いし珈琲くらい飲んでいって」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
淳さんはハンドバッグを後ろ手に、ぴょんと飛んだ。
そういうことで、二人で武蔵野館へのんびりと歩き始めた。